看護師派遣で覚書調印=日比EPA

日本、フィリピン両国は12日午後、マニラの労働雇用省内で、経済連携協定(EPA)に基づくフィリピン人看護師や介護福祉士の派遣、受け入れに関する覚書に調印した。EPAに基づく外国人労働者の受け入れはインドネシアに次いで2カ国目。今年4〜5月にも第1陣が来日する。
2009/1/12 時事通信


 昨年12月に発効した日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)に基づき、厚生労働省の外郭団体「国際厚生事業団」と比政府は12日、フィリピン人看護師、介護士の日本受け入れに関する覚書に調印した。

 比政府は近く候補者の募集を開始、4月下旬にも第1陣が訪日する。日本は2009、10年度の2年間で、毎年それぞれ看護師200人、介護士300人の計1000人を受け入れる方針。

 日本側の調整機関となる同事業団は、29日まで日本国内で受け入れ事業者を募集する。(マニラ・稲垣収一)
2009/1/13 読売新聞
フィリピン | 介護・看護

雇用創出が必要

フィリピン商工会会頭−雇用創出が必要

 国際金融危機が深刻化し、「世界同時不況」という言葉がささやかれ始めている。来年は海外出稼ぎ労働者(OFW)の雇用不安、輸出の減速でフィリピンの経済環境も厳しさを増す見通しだ。NNAはこのほど、フィリピン商工会議所(PCCI)のラクソン会頭に話を聞いた。PCCIは1,000億ペソの官民共同基金で景気を刺激し、10万人超の雇用創出を図る考えだ。【吉岡由夏】

 ――日本をはじめとする先進国は景気後退に入っている。フィリピンの国内総生産(GDP)成長率は今年、4%台を維持する見通しだが、来年の成長率をどのように予測するか。
 
 政府の開発予算調整委員会(DBCC)が発表した見通し(3.7〜4.7%)より若干低い3.0〜4.6%を見込む。
 
 フィリピン経済が比較的安定しているのは、◇OFWからの送金(今年は前年比15%増が予想される)◇ペソ安◇健全な銀行システム―デリバティブ(金融派生商品)取引が少なく、経営破たんした米証券大手リーマン・ブラザーズに対するエクスポージャーが国内の銀行資産全体の1%程度にとどまった――などの理由がある。
 
 ――国際金融危機の直接的な影響は限定的とはいえ、輸出は減速しており、10月の輸出総額は、前年同月比14.9%減と7年ぶりの大幅な落ち込みだった。
 
 主要輸出先である米国の景気低迷で電子部品業界は大きな打撃を受けており、来年の輸出成長率は1〜2%にとどまるとみている。
 
 輸出減速を相殺するのは、◇個人消費を支えるOFW送金◇ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業の成長――の2つだ。
 
 海外送金は来年、ドル建てでは今年を下回るが、ペソ安基調のため消費に大きな影響はないと考えている。最近では海外で働くOFWの解雇が伝えられるが、日本や米国での雇用が減っても中東にはまだ就労機会がある。
 
 BPO産業については、コールセンターの伸びはやや減速気味だが、バックオフィスや医療・法律記録転写などの分野が成長すると期待している。
 
 ■10万人の雇用創出
 
 ――今年10月時点の失業率は6.8%で、2四半期連続の改善だったが、国内では自動車、電子部品業界を中心に人員削減に踏み切る企業が出ている。来年はどうか。
 
 失業率は悪化するだろう。そのためにも景気を活性化させ雇用を創出する必要がある。
 
 政府はGDPの1.0〜1.7%相当の額を景気対策として来年度予算に盛り込んでいる。これとは別に政府と民間が各500億ペソ、計1,000億ペソを拠出する官民共同基金で雇用を安定させたい。
 
 エネルギーや農業なども支援対象になるが、主にインフラ整備事業向けだ。直接的な雇用だけで10万人以上の雇用が創出できる。間接的なものを含めればもっと大きい。
 
 ――政府側の拠出機関としてはフィリピン開発銀行(DBP)、フィリピン不動産銀行(ランドバンク)、社会保険機関(SSS)などが決まっている。民間側の出資者は。
 
 民間の拠出機関(銀行と一般企業)との話し合いは進んでおり、来年初めには企業名と支援対象事業を公表する予定だ。
 
 ■電力料金引き下げを
 
 ――PCCIは10月、アロヨ大統領が掲げる「セルフ・リライアンス(自立)」向上の方針を強く支持する姿勢を打ち出した。その理由は。
 
 こういう大変なときこそ、基本に戻り、国内経済を強化する必要があるからだ。セルフ・リライアンスは、◇エネルギー◇食糧安全保障◇教育◇インフラ――の4本柱から成る。
 
 東南アジアで最も高いといわれる電気料金を引き下げ、企業の競争力を向上させたい。電気料金の高さは、配電大手メラルコにも責任がないとはいえないが、主な理由は輸入石化燃料に依存していることと、独立電力事業者(IPP)の効率性の低さが原因。バイオ燃料、太陽光・水力といった再生可能エネルギーなど国内資源をできるだけ活用し、同時に電力事業の民営化を促す。
 
 食糧については、現在1割を輸入に頼っているコメをすべて自給することが目標。作付面積を増やさなくても収穫後保存施設を整備するだけで、28%ものコメの無駄をなくすことができ、国内需要を超えるコメが供給できるようになる。
 
 ――教育とセルフ・リライアンスの関係は。
 
 大卒者の就業率は約4割と低い状況だ。産学協同を進め、雇用のミスマッチをなくし、就業率を改善したい。企業のニーズにあったカリキュラムを大学や技術教育技能開発庁(TESDA)訓練校に設ける計画で、造船、海洋、観光、ホテルなど8産業が参加を表明している。
 
 さらにインフラ整備事業の推進で雇用創出を促す。ロールオン・ロールオフ(RORO)船を利用した「強力国家海上ハイウエー(SRNH)」などの整備が進められている。
2008/12/23 NNA
フィリピン | その他

アウトソーシング業界の今(4)地方の挑戦

 セブ島の西隣に位置するネグロス島。その中心地である人口50万人のバコロド市(ネグロスオキシデンタル州州都)が今、新興のオフショア・アウトソーシング(海外業務委託)都市として注目されている。アウトソーシング業界はマニラ首都圏に8割が集中しているのが現状だが、今後、地方活性化の火付け役になるかもしれない。砂糖産業の町バコロドの取り組みをみる。【吉岡由夏】

 マニラから飛行機で約1時間。今年初めに完成したばかりのバコロド・シライ国際空港から車に乗り換えると、道路沿いに見えるのは延々と広がるサトウキビ畑だ。ネグロス島の主要産業は製糖で、フィリピンの砂糖生産量の約6割を供給するといわれる。
 
 バコロド市議会議員で、地元の情報技術(IT)産業を推進するバコロド・ネグロスオキシデンタル情報通信技術連盟(BNEFIT)の会長を務めるジョセル・バタパ・シゲ氏は「地元には大卒者の就職口がなく、卒業後はマニラ首都圏や海外に出ていく人が多い。企業を誘致して雇用を増やし、全国平均を上回る失業率を改善したい」と力説する。今年7月時点の全国の失業率は7.4%だが、バコロドは約10%という。
 
 現在バコロドで運営するアウトソーシング関連企業はコールセンターだけで、大手としては仏系テレパフォーマンス、米系テレテック、コンバージス、フォーカス・パシフィック・コミュニケーションズ、テレクエストの5社がある。進出が始まったのは2006年と最近で、2年間で約2,000人の雇用を生んだ。従業員数は今年末までに5,000人に達する見通しだ。
 
 業界の地元経済への寄与は、給与ベースで言うと月々3,000万〜4,000万ペソ。「当初は免税措置を受けられるため、地方政府にそれほどの見返りはないが、給与という形で市民に還元されるのは何よりうれしい」(バタパ・シゲ氏)という。
 
 バコロド市として特に優遇措置は設けていないが、フィリピン経済区庁(PEZA)のITパークが11カ所あり、入居企業は税制優遇の対象となる。また、マニラ首都圏と比べて、労賃やオフィス賃貸料が安いのが、こうした地方都市の魅力だ。
 
 ■ホテルがコールセンターへ
 
 06年2月にここで営業を開始したテレパフォーマンス・バコロドセンターの人事管理部長を務めるクレア・ベディア氏によると、基本給は首都圏に比べて10〜15%、交通費などの手当を含めると3分の1ほど安い。
 
 オフィス賃貸料は2〜3割低く、電気料金も4分の3程度。停電は時々あるが、自家発電で補っている。
 
 同社はマニラ首都圏でも4カ所のコールセンターを運営するが、「バコロドを選んだ最大の要因はコストではない。首都圏で働く地方出身者を地元で雇用したいというのが、そもそもの理由」(同氏)という。
 
 このほか、◇マニラのオフィス供給不足◇バコロド周辺の大卒者数(年間2万5,000〜3万人)◇英語の発音の良さ(マニラ首都圏はタガログ語が主流で英語が第2言語だが、ネグロス島がある西ビサヤ地方は多くの方言が混在しているため英語が第1言語となっている)――などが決め手になった。
 
 オフィスはITビルのイメージとはほど遠い、2階建ての元ホテル。一部はまだホテルとして使用されており、庭にはプールもある。1階には社員食堂や娯楽室が設けられ、ゆったりした雰囲気だ。ここもPEZAからITパークの認定を受けている。
 
 当初は500人でスタートしたが、現在は1,200人が働く。顧客は米企業5社で、インターネットに関する技術支援や旅行の予約サービスなどを行っている。
 
 24時間365日稼働で、社員の約9割は夜勤。マニラと比べて生活スタイルがゆっくりしていてストレスが少ないせいか、転職率はマニラより低い。コールセンターの数がまだ限られており、競争が少ないことも一因かもしれない。
 
 採用条件は18歳以上の高卒で、大卒にはこだわらない。バコロドの私立高校はコンピューター教育に力を入れており、実務能力を備えた若者が多いという。
 
 ■職業訓練、政府が支援
 
 フィリピン・ビジネス・プロセッシング協会(BPAP)によると、アウトソーシング企業の社内や第三機関に設けられた訓練センターは全国で約200カ所あり、労働者の供給に寄与している。バコロドにもこうしたセンターが5カ所あり、このうち最も規模が大きい「センター・フォー・アライド・パラメディカル・スタディーズ(CAPSI)」を訪ねた。
 
 郊外にある雑居ビルの3階部分のほとんどが、CAPSIの教室で占められている。パラメディカル(救急医療士)とコールセンターのオペレーターの訓練に併用されていることから、学校名がついた。
 
 今年初めに営業開始とまだ新しい。プログラム・コーディネーターのコリーン・レイエス氏によると、月90〜100人の生徒を受け入れており、これまでに500人を送り出した。
 
 コースは100時間、356時間の2種類あるが、現在は技術教育技能開発庁(TESDA)から授業料5,000ペソが全額補助される100時間の集中コースに特化している。TESDAの試験に合格した者だけが受講資格を与えられる仕組みだ。
 
 年齢制限は18〜55歳と幅広く、高卒者から大学中退者、大卒者までさまざま。米国英語のアクセントやカスタマーサービス、米国の文化・地理、コンピューター操作などを約1カ月かけて学ぶ。
 
 トレーナーは地元コールセンターで最低2年働いた経験者。レイエス氏によると「最新の情報を授業に取り入れるため」という。
 
 50%以上の就職率を達成することがTESDAから課されている条件で、今のところ順調にクリアしている。レイエス氏は「卒業者には給与の高いマニラ首都圏で働くよう勧めている」が、地元で働くことを希望する受講者が多いらしい。
 
 前述のバタパ・シゲ市議会議員は「今はコールセンターだけだが、将来的にはより付加価値の高い分野に力を入れたい」と語る。バックオフィスや医療・法律記録転写、アニメ関連企業が現在、進出を検討しているという。
 
 広大なサトウキビ畑が広がり、住む人の心もおおらかなバコロド。若者に地元で働き定着してほしいと願う同氏の夢は徐々に現実に近付いており、バコロドがフィリピンの主要アウトソーシング拠点となる日もそう遠くはなさそうだ。(了)
2008/12/16 NNA
フィリピン | 投資・経営